2010年9月1日水曜日

民主党総裁選

 民主党総裁選が始まった。史上初めての民主党総裁選で日本の国の総理大臣を決めるということになる。
 
 今日は知人からいただいた渡辺治一橋大学名誉教授の講演録「参議院選挙後の情勢と構造改革をめぐって」から今の情勢を考えてみたい。

 同氏は、鳩山内閣を「不十分ではあるけれど、国民の運動と期待に答えようとした」内閣ととらる。そこで実施されたのが普天間基地の海外移転宣言、高校授業料の無料化、障害者自立支援法の廃止だった。ところが、これらの施策は、「財界とアメリカの強烈な圧力の下で」最終的には保守政党の枠組みに戻り、鳩山内閣は退陣を余儀なくされてしまう。しかし、「鳩山政権の動揺ジグザグに対し、財界とアメリカは強い危機感を持ち、」、「市民運動をうたい文句に」登場してきたのが菅政権。菅政権は、「鳩山政権が保守の枠組みから逸脱した部分を再度保守の枠組みに引き戻し、構造改革と日米同盟という政治を再び再現する課題を担って登場した政権」反動政権であると菅政権を規定する。

 民主党は元々自民党と政権を競い合う保守政党として出発し、一時は構造改革路線を自民党と競っていた時期がある。これを支持していたのが、大都市部の中間層。ところが、構造改革の矛盾が現れてくると、民主党は左展開する。子ども手当、高校授業料の無償化、農家の個別保障しかりである。「財界の反撃や圧力にもかかわらず、民主党は、09年に急進的方向に踏み出」す。それは、後期高齢者医療の廃止(元々民主党は賛成だった)であり、派遣法の改正(製造業派遣の禁止、登録型派遣の禁止)であり、障害者自立支援法の廃止であった。これらで、「都市部の勤労者層や高齢者、地方の期待を圧倒的に吸収」した。何故民主党は変わったのか。一つは反貧困、反構造改革の運動であり、福祉に対する違憲訴訟の数多くの提起であり、反改憲運動であり、沖縄県民の普天間基地をめぐる運動だった。

 しかし、政権樹立後は全ての問題で財界、アメリカ、マスコミの圧力で鳩山政権は動揺とジグザグを繰り返す。その中で構造改革路線支持者であった大都市中間層が不信を突きつけるに至る。鳩山政権の直線的支持率低下の原因はここにある。

 菅政権は、「反小沢、日米合意の堅持、財政再建の3の柱を掲げて登場し」た。その性格は、「単なる反動政権、保守回帰に留まらない、」「支配階級の宿願を達成する意欲的な政権として長期政権を狙う、そういう役割をもって登場した点も見る必要がある。」と強調される。具体的には、日米同盟の「深化」、法人税減税と消費税増税、参議院定数40削減、衆議院比例定数80削減である。

 菅政権で民主党が去年の8月に戻るとの勤労者や高齢者の期待は支持率のV字回復となって現れるが、消費税増税表明でそれは冷水を浴びせられることになってしまう。

 しかし、財界はこぞって菅政権を支持、「菅政権は、この結果(参議院選挙結果)に動揺することなく、消費税の税率アップに向けて邁進することを期待する。」とまで持ち上げる。

 このような菅政権では、日米同盟の深化と改憲が大きく進む可能性がある。アフガンへの自衛隊派遣、恒久派兵法の制定、防衛計画大綱の策定、日本国憲法改憲といった課題でである。これは参議院選挙で新しく生まれた政党が、全て改憲で一致していることからも十分考えられると指摘される。

 さらに、菅内閣は構造改革漸進路線(急進ではなく漸進)を邁進しようとしていると指摘、消費税増税は必ずやるが、選挙で負けないように大連立か部分連立かでやる。地域主権の問題では構造改革押しつけのツケを地方にとらせる。その行き着く先が道州制。さらに安定した構造改革の体制づくりのための議員定数削減が続くとされる。

 氏は総力を上げて対案つくりを急げとおっしゃる。その理由は小泉の二匹目のドジョウに匹敵する菅政権の支出抑制策への対抗であり、全ての国民と革新政党が確信と納得をもてる対案が必要だからとされる。そしてその柱は、社会保障だけでなく雇用保障も視野に入れた保障の充実であり、財源の明確化であり、福祉国家型地方自治体と民主的国会づくりの課題、日米同盟と抑止力論に変わるアジアと日本の平和国家、9条に基づく安全保障構想の具体化であると指摘される。

 前半はよく理解できるが、後半の対案づくりの部分はよくわからない部分もある。確かに対案は必要だとは思うが、それを民衆一人一人が如何に血と汗で自分のものにしていくか、それがもっとも問われているように私は思う。

0 件のコメント:

コメントを投稿