2010年8月10日火曜日

貧困大陸アメリカⅡを読む会

 今日は貧困大陸アメリカを読む会だった。アメリカの医療業界のすさまじさが読み取れる。しかし、笑ってはいられない。日本でもその状況は進行しているのだ。どこで進行しているか。後期高齢者医療と言われる分野でである。
 政府は後期高齢者医療の中間のまとめを審議会に出した。マスコミはこれを好意的に受け取っているが、私はこれは大変な問題をはらんでいると思えてならない。まさに、市場原理主義の医療改革版の押し付けそのものだからである。
 確かに被保険者はもとの保険に戻る。しかし、これだけが宣伝しすぎられてはいないか。国民健康保険の世帯員の納付義務がなくなるというが、これは世帯主に移るだけのことである。さらに中間見直し案は「財政の安定化と保険料の公平化に寄与した。」とまで言っており、何ら後期高齢者医療については反省はしていないのである。さらに保険給付総額の10%を後期高齢者(75歳になるのか65歳になるのかまだわからない)が負担するという財政上のシステムは変えないとはっきり言っているのだ。そして国保は広域化するという。
 それでは広域化すれば国保は成り立つのか。全国で2番目の広域化が図られているといっていい大阪市で見てみると、大阪市の国保は大赤字なのである。累積赤字は364億円、40年前の1971年当時から1億7千万円の赤字が発生、そこに、国からの調整交付金が収納率が低いからと188億円、福祉医療など国の制度にない特別な医療費助成をやっているからと188億円のペナルティが科せられてこうなったのである。つまり、国からの調整交付金が削減されたことが大きな赤字の原因になっているのである。だから、国からの援助をそのままにして、いくら広域化しても国保の赤字は減らないのである。
 広域化についても、案が出てからしばらくして後、長妻厚労相は都道府県が保険者になると言ったが、都道府県はこれに反対で、後期高齢者医療で非民主的な期間としてこれも不評だった今のままの特別地方公共団体「広域連合」してほしいと言っている。
 うがった見方をすると、2008年10月に政管健保がきょうかい健保に代わり、都道府県単位になった。将来的にはこの保険とも一緒にし、事業主負担を軽くしていくのではないか。そして、大企業従業員や公務員(教員、警察官、自衛官を含む)は組合健保や共催などの特別な保険、貧乏人は赤字まみれの地域保険と棲み分けさせられるのではないかという心配もはたらく。
 さらに、後期高齢者医療制度で不人気だったフリーアクセスを制限すする「かかりつけ医」制度は健在だし、「重複頻回受診者の訪問指導」まで新しく付け加わっている。また、保険料の上限を現在の63万円から93万円まで引き上げるという。もう無茶苦茶だ。そして感心の財源部門に国が如何にかかわっていくのか全く触れていない。
 要するに保険だけ変えて、医療保険財政から国は財政的にどんどん撤退していく、そういう方針が中間まとめで示されているのである。
 さらに恐いのは、革新政党でさえも、老人保健制度に戻せと言っているだけで、老人福祉としての医療費無料化は言っていないことである。後期高齢者医療の原型は老人保健制度にあったことを忘れてはならない。革新政党は、老人保健制度が出来たとき、自分が言ったことを忘れてしまったのか。心許ない限りである。今こそ、老人福祉制度として行われていた当時まで考え方を戻し、その上で新しい医療保険制度のあり方を考えていくべき時ではないだろうか。

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